離婚前にできる3種類の財産の保全処分とは?
ここでは、財産を管理する相手方配偶者が勝手に財産を処分したり、隠したりする恐れがある場合に取ることができる3種類の保全処分手続きについて解説させていただきます。
3種類の保全処分手続きとは、
- 調停前の仮の処分
- 審判前の保全処分
- 民事保全手続
の3つの事を指しております。以下、一つずつ解説させていただきます。
1.調停前の仮の処分とは?
通常、調停の申立てから実際に調停が行われ、調停離婚が成立するまでには、かなりの期間がかかります。
「調停前の仮の処分」とは、その期間に相手方配偶者が財産を処分したり、隠したりするのを防ぐためのものです。
尚、「調停前」と言っても、これは調停の申立て前のことではなく、調停が開始されてから成立する前という意味です。
調停前の仮の処分は、調停委員会の独自の判断で職権で発動されるものですが、申立人が「調停前の仮の処分の申立書」を提出して職権の発動を促すこともできます。
調停委員会は、調停の申立後、終了するまでの間、調停のために必要と認める処分を命ずることができます。
どのような処分を命じるかは全て調停委員会の裁量によりますが、残念ながらこの処分には強制的な執行力はありません。
万一、相手方配偶者が正当な理由がなく措置に従わない場合であっても、10万円以下の過料に処せられるのみとなっていることから、実効性に乏しく利用件数は少ないのが実情です。
2.審判前の保全処分とは?
離婚に関する審判を申し立てると同時に、「審判前の保全処分」を申し立てることができます。
この申立てを行うにあたっては、求める保全処分と求める理由を明らかにする必要があります。
その上で、申し立てている審判が認められる必然性が高いか、保全の必要性や緊急性があるのかなどが審理されます。
審理の上で、申立てが認められた場合に、家庭裁判所が仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任などの審判を命ずることとなります。
尚、この保全処分の対象となるのは、
- 夫婦の同居、協力、扶助
- 婚姻費用の分担
- 子の監護
- 財産分与
- 親権者の指定や変更
などとなっております。
命じられる処分の具体例としては、仮差押え、処分禁止・占有移転禁止などの仮処分、婚姻費用や養育費の仮払い、子供の引渡しなどが挙げられます。
また、財産分与の仮差押さえなどの場合には、担保として保証金を供託する必要がありますが、一般的に、後述する民事保全手続きの場合よりは低額になっています。
この審判前の保全処分には執行力があるため、相手が財産を隠したり処分したりするのを防ぐことができます。
3.民事保全手続きとは?
民事保全手続きを用いて、離婚調停前に、離婚裁判で決着が付くまで相手方の責任財産(差し押さえの対象となる財産のことです。)のうちの特定の財産を処分することを禁ずることができる場合があります。
この裁判所の命令を「仮差押え命令」と言います。
この手続きは、実際に離婚調停が始まる前に、相手方が財産を隠したり、処分してしまうことを防ぐ手段である点に特徴があります。
では、どのような場合に民事保全手続きを用いることができるのでしょうか。
民事保全手続きは、裁判での決着を待たずに、相手方の持っている特定の財産の処分権を制限することができるという、強制力を伴う手続ですので、以下のような厳格な要件が定められています。
①相手方に離婚原因があること
~仮に裁判になった場合判決で離婚が認められる場合でなればなりません。
②保全手続きを要する客観的な理由が必要
~相手方が財産隠しを行っていると認められる客観的な理由(通帳を多数保有している、不動産の売却活動を行っている、など)のことです。
③担保(保証金)が必要
~裁判所に納めるもので、離婚決着後戻ってきます。金額は保全する財産の額等により異なります。
以上の条件は、あくまで一般的なものです。
差押える財産が動産なのか、不動産なのかによって、担保額も前後しますし、また、保全手続きを要する客観的な理由の強弱も大きく変わってくることがあります。
これらの手続きについては、財産を処分されてしまってからでは遅いことからも手続きのスピードが肝心です。
その意味では、この手続きについては、自分自身で行うより、弁護士等の専門家に依頼する方が望ましいと言えます。
アドヴァンス法務事務所では、離婚問題に強い弁護士事務所(女性)を必要に応じてご紹介させていただいております。
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